1899年4月17日付 琉球新報記事 画像

○水産物保護法設定の準備

本邦に於ける水産物の収穫法一定せずして濫獲の弊に流れ水産物の発育と増殖とを害する事少しとせず故に適當なる保護法を設けざる可らずとは斯業に関係せる人々の異口同音に唱ふる所にして當局者中にも亦此事を企画する者あるに如何せん。農商務省に於ける水産物の調査甚だ不完全にして二三の種類を除くの外は其物の発生地及集合の関係すら明ならざる者あり。現に鰹の如き南洋に於て発生し四月以降本邦沿海に出で来る者なるや将又本邦沿海に於て発生する者なるや未だ明確ならず。従て之が保護を行はんとするも何時何地に対して禁漁を命ずべきか此を定むる事能はず。又貝類の如き甲地に於て一寸より発達せざる者も乙地に於ては二三寸以上のものを見る事稀ならず加之其収穫法に於ては甲地と乙地と習慣を異にする為一方が常に損失を蒙れる事あり。例令ば静岡県下の漁業の如き焼津地方は鰹を網にて漁することを禁ぜるも伊豆地方にては此禁無きが故に前者は常に後者の為めに其の業を妨げらる故に今回水産局にて水産保護法を設くる準備として各種水産物の発生地及発育時期並に各地の漁獲方法及慣習等の取調へに着手する筈なりと云ふ。