1899年9月7日 琉球新報記事 画像

雑報

●海外貿易開始についての準備如何

(開港祝賀会に於いての椿書記官の演説)

商業の媒介を以て従来潜伏せし需要を喚起し大に国内の殖産工業を振起するは既往各国の実例に照らして経験家の疑わざるところである今煩を憚り一々例証は挙げぬが我が国開港以来の実況に照らして見ても明白である且又輸出商は縦令其の始めに方りては其の数量は些細なるにもせよ之かため国内の物品製作に改良を促し且著しく奨励するもので全体の産業上其の効率少なからずと聞けり我が国に於いても海外輸出品の改良は次第に行われ又従来格別の価なりし鳥毛麦藁真田貝殻或はヘチマ迄が貿易品に加わるに至りしも此の例である沖縄地方も目前の状況にては一見輸出に適する物品なきが如くなるもよく相手国の事情を査察しこれをか嗜好に投することを考究せば海産物を始めとし今日に於いて価なき物品に価を生じ従来製造せざる物品をも製作するに至るは必然である是れを務むるが今後緊要なる事件と考える。中間商とは甲乙両地の中間に立ち需要供給の媒介をなすものを言う。此の中間商より言えば世間は皆生産地にして兼ねて需要者なるの故に営業の範囲殆んど涯際なく力一杯手を伸ばし得るもので何日由て商業国のためには此の中間商を以て主要なる目的とすること故生産に乏しく狭小なる国に於いて常に発達すると言う当県の如きは此の点よりいえば中間商を営むに適するものなれどもここに注意すべきは此の中間商は商人的の智識練達及び資本に於いて大に優なる所なきを得ざること是なり然ども当県の事情は後来必ず之に依らざる可からざることなれば今より特に力を此の方向に用られんことを望む(未完)