1900年2月3日付　琉球新報記事　画像□

○垣の花漁業家の一椿事

島尻郡垣の花胡城村の漁業家中には捕魚場の区域及ひ捕魚種類の競争より一の黨派を生じ糸満黨大嶺黨とて平素同業者仲間に呉越も啻ならざる軌轢ある由なるが一昨一日午后四時頃の由なりき大嶺黨の領袖株安谷屋亀なるもの味方の勢を引率し糸満黨の領袖株国吉ミトなるものの家屋を襲ひ魚具を以て家族等に重傷を負はせしに又今度は其復讐にミトが味方の勢を呼ひ集め亀の家屋を襲ひ双方共傷を負ひ負傷者二十二人を出したる由なるが其の中国吉ミト(六十一)安谷屋亀(四十七)上原太郎(五十六)国吉三良(五十九)国吉松(二十九)川上松(三十六)の六名は直に入院し目下治療中の由なるが安谷屋亀国吉三良川上松の三名は多分生命覚束なしとの事なるが同日午后五時頃より予審判事検事も病院へ出張し徹夜して取調をなし同日午前四時頃全く終了せし由なるが其の取調の結果糸満黨より一名大嶺黨より五名監獄へ送られたり。又一昨夜は那覇署より十数名の巡査を該地へ派遣し夜中警戒をなしたりと云ふ。詳細は次号に譲る。