1900年4月25日付 琉球新報記事 画像

○護得久氏の清国談(前承)

▲前途有望

現今南清へ輸出せらるる本邦の産物は綿布綿糸類を重なるものとして其他マツチ類、ランプ類、髪附油、蝙蝠傘、石鹸、歯磨粉の如き雑貨品及ひ海産物等にして年々需要増加の勢あり。而して此等の貿易品は多くは支那人の手に依りて輸出販売せらるるものにして日本人の商業は実に微々として振はず只三井物産会社の支店のみは稍々大仕掛にして組織も整頓し日本人の商業として耻かしからず将来大に望ありと雖ども其他は僅々二三千円以下の小資本にて商業を営める者か然らずんば無資本同様の小商人のみなれば到底支那商人の敵にあらず。左れば現今日本より輸出する南清貿易品の利益の大部分は常に支那人に襲断されつつありと云ふも過言にあらざるなり夫れ此の如く南清に於ける日本人の商業は微々たるものなりと雖ども日本品の需要多く且つ年々増加の勢あるは争ふべからざるの事実なり。而して此等貿易品運輸の航路は現今は横浜、神戸、長崎、上海を経て始めて厦門福州に達する順序なるが今后若し沖縄厦門間の航路を開始するとせば則ち運賃の如きも従来の航路よりは安く附き従て九州以南の支那貿易品を那覇港一手に引受け得べき望あり故に余の考ふるには南清と商業の取引を為すには最初は先つ目下需要されつつある他府県の物産を以て彼と貿易し漸次其嗜好を伺ひ之に応じて以て我沖縄の物産を輸出するに如かざるなり尤も海産物の如きは直に輸出して大に利益あるべしと雖も其他の物品に至りては果して何れの物産を輸出せば利益あるやは未だ俄かに判別しがたき事は既に陳へたる通りなるも兎に角沖縄南清間の貿易が有望なるは疑ふべからざるなり。

(以下次号)