1900年7月19日付 琉球新報記事 画像

○訪問録(南清貿易に就て)

◎朝武士首里区長

南清貿易に就ては我輩確乎たる意見はなきも双方の貿易を行ふには先つ航路を開かざるべからざるを以て開港場を支持するは航路を開くに如くはなしといふ事だけは信じて疑はざる所なり。南清貿易に如何に有望なりとするも双方交通の航路なきに於ては到底貿易の行はるる道理はなく又た五万円の高に上るべき輸出入貨物を見るべき筈はなきなり故に航路を開くの一点は開港場を支持するに就て必要缺くべからざるの事柄にして之に就ては実業家の意見大概一致せるが如し而して航路を開始するには政府の保護を要するとの事にて知事に於ても大に尽力せらるる事にしあれば好結果を得べしとは信ずれども若し万一政府に於て保護せずといふ事になる時は如何にせんとするか此の如き場合に於て実業家諸君は如何に処せんとするか未だその意見を知るを得ずと雖ども我輩の考ふる所を以てせば航路開始か開港場を支持するに就て必要欠くべからずとせば開運会社、広運社、商船会社の如き本県の海運業者が合同して南清航路を引受るか又たは開運会社が目下の先島航路を延長し之に相當の保護金を増して南清迄航海せしむるかの二方法を取るの外なかるべしと思はるるが此二の内前者は営業上の利害得失よりして其成立甚だ六ケ敷かるべしと雖ども後者は随分出来得べき事と思はるるなり。此の如くにして来年七月迄に航路を開くを得は五万円の貨物を得ることは容易なるべしと思はるるなり。要するに航路の開通は開港場維持に就き必要なる事項にして政府の保護あれば此上なき幸なるも若し保護なきに於ては外に適當の方法を設けて航路を開通し以て開港場を支持するの覚悟なかるべからず。

◎永江徳志

南清貿易の有望なる事は今更申す迄もなく而して航路の保護に就ては知事の御尽力に依り政府も同意して議会へ提出せらるるの運びに相成り居れりとの事にて若し議会の協賛を経て愈々政府の保護に依り航路を開くを得ば其航海をば年に三四回と定め其他は内地航海を企てて以て経費を補ひ運賃を安くし双方貿易の便利に供し○○て漸次貨物の運搬頻繁となるに従ひ航海の度数を増し益々運賃を安くする事を得べき見込なり。然らば来年七月迄に航路開始の運ひになるや又た其れ迄に五万円の輸出入貨物あるや否やと云ふに之に就ては断言しがたしと雖も政府にて既に航路を保護するといふ事になれば期限に就ては二三ケ月の猶予は出来得べき事と思ふ。

◎古賀辰四郎

来年七月迄に南清貿易の輸出入貨物高が五万円に上るの見込あるや否やは今より之を断言し能はず商業上の事ゆへに其時になりての成行を見るにあらざれば分かるものにあらず。