1900年7月23日付 琉球新報記事 画像

○訪問録(南清貿易に就て)

○普久里宗業

當地よりの輸出品としてはスルメ、カラス、鱶のヒレ等の如き海産物又は無地の芭蕉布の如き反布類は随分見込ありとの事なり又た塩は福州辺に於ては専売業者ありて広く販売するものなきゆえに需用者の多き割合には供給者少なく従つて高価なりとの事なれば當地の塩を輸出して彼地に販売せば利潤を得べしと思はるるなり。支那茶は當地人の嗜好する所にして年々需要増加の有様なれば若し福州貿易開始の暁には支那茶の輸入のみにても五万円の価格に上るの見込あらん歟と想像するなり。福州との貿易を開始して那覇の開港場を支持するに就ては輸出入貨物の有無は左程憂ふるに足らざれど貿易を始むるには航路を開かざるべからず而して之に政府の保護を要する事は目下の事情已を得ざるべし実に開港場を支持すると否とは県下の利害得失及ひ体面にも関する事なれば県人挙つて講究し等閑に附すべきもにあらずと信ずるに只業務多忙に取紛れ知らず識らず県下の重要事件を冷淡に過し今突然訪問せられて這の問題に接す実に汗顔に堪へざる次第なり希くは新聞紙上に於ても広く世人に注意を促されよ。余深く當世の青年諸子に望を属し其意見を聞くを薬とするものなり。及ばずながら青年諸子の助力に依りて県下の為めに尽瘁するは余が平生の希望なり。

○山里永錫

南清貿易の事に就ては実地に立入りて調査を為したる事なければ確乎たる意見はなきも大体に就ていへば直接の航路さへ開かるるに於ては茶の輸入海産物の輸出等にても五万円の価格に上るべき見込あらんかとも思はるるなり。詳細の事は実地に視察したる人にあらざれば分からざるべく視察旁々商用にて彼地へ渡航せる比嘉次良といへる人近々の内帰県の筈ならば此人に御面会あらば随分有益なる話あるべし其人帰県の上は御知らせ申すべし。(此訪問は比嘉次良が未だ帰県せざる前の事に属せり)

○嘉数詠顕

直接の航海を開き実際の貿易を始むるに於ては支那茶の如きアーランチエーの如き當地の需用年々増加の有様なるを以て之を直接に輸入する事になれば之のみにても五万円には下らざるべしと思惟す。其他輸入すべきもの輸出すべきの多々あるべきを以て政府に於て保護を与へて航路を開く運ひになれば開港場を支持すること六ケ敷にはあらざるべし。

○津嘉山珍基

余は首里人なり。如何で海外貿易の事を知り得べきや南清貿易の事は那覇の実業家か又は寄留商人に問ふに如かざるなり。但し南清貿易は将来有望なりと云ふ事だけは信ずるを以て直接の航路さへ開かるに於ては開港場を支持し得べしとは思ふなり。