無人島探訪記


十二.無人島の嵐

 四月五日あやしいと思われた天候は予想通りに夕刻から風雨が強くなり、寒気が急に襲つて来た。
 海岸の方にはあわただしいエンヂンの音、騒動しい漁師の大声が聞こえる。
 夜半には遂に大嵐となり宿営地も又混乱状態に陥る。ビロウ葺の小屋はぐらつき、雨は打ち込み、三坪の幕舎はひつたぐられそうになつて来る。幕舎に載せた石がおちる。荒れ狂う大波は雷鳴とともに惨じく響く、頼りになるものはこの石垣ばかりである。
 これが崩れてしまえば宿営地は風波のために一掃されるかも知れない。とんでもない無人島へ来たものだと思うと不安でならない。
 一枚の毛布に身をくるみ、ばたばた揺れる幕舎の中で夜の明けるのをまつ。

 明けて六日早朝楼門から海岸をのぞくと昨夕水を補給して居た五隻の漁船はもう姿が見えない。前夜半の中にどこかへ逃避したものらしい。
 山のような大波は磯に砕けてものすごいしぶきを上げる。陸地に引き上げてあつた刳舟は完全に転覆されて腹を見せて居り、海岸に放置されていた鰹の頭や内蔵がすつかり洗い流されて清掃されている。
 昨夜まで元気よく飛び交わしていたリユウキユウツバメの一群はすつかり元気を失い簡単に手で捕らえられる。

 追記、本稿は「幽霊船」など記述に抜け等があり不完全である。再掲にあたり、文中誤りを訂正・補足し、旧漢字は一部新漢字に改めた。(終り)

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